有名な詩-室生犀星

室生犀星 有名な詩



室生犀星(むろう さいせい)明治22年~昭和37年、石川県生まれ。


室生犀星「小景異情 その二」
ふるさとは遠きにありて思ふもの そして悲しくうたふもの

よしや うらぶれて異土の乞食(かたい)となるとても 帰るところにあるまじや

ひとり都のゆふぐれに ふるさとおもひ涙ぐむ そのこころもて 遠きみやこにかへらばや 遠きみやこにかへらばや



室生犀星「寂しき春」
したたり止まぬ日のひかり うつうつまはる水ぐるま あをぞらに 越後の山も見ゆるぞ さびしいぞ

一日もの言はず 野にいでてあゆめば 菜種のはなは波をつくりて いまははや しんにさびしいぞ



室生犀星「朝を愛す」
僕は朝を愛す 日のひかり満ち亙(わた)る朝を愛す 朝は気持が張り詰め 感じが鋭どく

何物かを嗅ぎ出す新しさに餓ゑてゐる。朝ほど濁らない自分を見ることがない、朝は生れ立ての自分を遠くに感じさせる。

朝は素直に物が感じられ 頭はハッキリと無限に広がってゐる。木立を透く冬の透明さに似てゐる。昂奮さへも静かさを持って迫って来るのだ。朝の間によい仕事をたぐりよせ、その仕事の精髄を掴み出す快適さを感じる。

自分は朝の机の前に坐り、暫らく静かさを身に感じるため、動かずじっとしてゐる。じつとしてゐる間に朝のよい要素が自分を囲ひ、自然のよい作用が精神発露となる迄、自分は動かず多くの玲瓏たるものに烈しく打たれてゐる。




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