有名な詩-宮沢賢治

宮沢賢治 有名な詩



宮沢 賢治(みやざわ けんじ)(明治29年~昭和8年、岩手県生まれ。


宮沢賢治 「雨ニモマケズ」
雨にも負けず 風にも負けず 雪にも夏の暑さにも負けぬ 丈夫なからだをもち 慾はなく 決して怒らず いつも静かに笑っている

一日に玄米四合と 味噌と少しの野菜を食べ あらゆることを 自分を勘定に入れずに よく見聞きし分かり そして忘れず

野原の松の林の陰の 小さな萱ぶきの小屋にいて 東に病気の子供あれば 行って看病してやり 西に疲れた母あれば 行ってその稲の束を負い 南に死にそうな人あれば 行ってこわがらなくてもいいといい 北に喧嘩や訴訟があれば つまらないからやめろといい

日照りの時は涙を流し 寒さの夏はおろおろ歩き みんなにでくのぼーと呼ばれ 褒められもせず 苦にもされず そういうものに わたしはなりたい



宮沢賢治「永訣の朝」
けふのうちに とほくへいってしまふわたくしのいもうとよ みぞれがふっておもてはへんにあかるいのだ(あめゆじゅとてちてけんじゃ)

うすあかくいっさう陰惨〔いんざん〕な雲から みぞれはびちょびちょふってくる(あめゆじゅとてちてけんじゃ)

青い蓴菜〔じゅんさい〕のもやうのついた これらふたつのかけた陶椀〔たうわん〕に おまへがたべるあめゆきをとらうとして わたくしはまがったてっぽうだまのやうに このくらいみぞれのなかに飛びだした(あめゆじゅとてちてけんじゃ)

蒼鉛〔さうえん〕いろの暗い雲から みぞれはびちょびちょ沈んでくる ああとし子 死ぬといふいまごろになって わたくしをいっしゃうあかるくするために こんなさっぱりした雪のひとわんを おまへはわたくしにたのんだのだ ありがたうわたくしのけなげないもうとよ わたくしもまっすぐにすすんでいくから(あめゆじゅとてちてけんじゃ)

はげしいはげしい熱やあえぎのあひだから おまへはわたくしにたのんだのだ

銀河や太陽、気圏などとよばれたせかいの そらからおちた雪のさいごのひとわんを……

…ふたきれのみかげせきざいに みぞれはさびしくたまってゐる

わたくしはそのうへにあぶなくたち 雪と水とのまっしろな二相系をたもち すきとほるつめたい雫にみちた このつややかな松のえだから わたくしのやさしいいもうとの さいごのたべものをもらっていかう

わたしたちがいっしょにそだってきたあひだ みなれたちゃわんのこの藍のもやうにも もうけふおまへはわかれてしまふ(Ora Orade Shitori egumo)

ほんたうにけふおまへはわかれてしまふ

あああのとざされた病室の くらいびゃうぶやかやのなかに やさしくあをじろく燃えてゐる わたくしのけなげないもうとよ

この雪はどこをえらばうにも あんまりどこもまっしろなのだ あんなおそろしいみだれたそらから このうつくしい雪がきたのだ

(うまれでくるたて こんどはこたにわりやのごとばかりで くるしまなあよにうまれてくる)

おまへがたべるこのふたわんのゆきに わたくしはいまこころからいのる どうかこれが天上のアイスクリームになって おまへとみんなとに聖い資糧をもたらすやうに わたくしのすべてのさいはひをかけてねがふ




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